映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「カサノバ」監督ラッセ・ハルストレム at シネリーブル神戸

カサノバ、といえばフェリーニ版の印象が強いが、今回はストーリー・テラーの神業的職人芸を誇る、スウェーデン人ハルストレムが監督。カサノバの猟色ぶりはイントロでちょこっと見せるだけで、その人物像をそれほど掘り下げない。しかし、二重三重に伏線を張り、各々のキャラクターが"世を忍ぶ仮の姿"を持つ為に誤解し合うという、実に複雑な脚本を精緻に描く事で、圧倒的な面白さを見せつける。18世紀ベネチアが舞台だが、どこかアメリカンな印象のルックで、ハルストレムらしからぬが、徹底して物語の面白さで見せ切る為のそれもまた狙いなのだろう。バチカンカソリックへのあからさまな皮肉、批判も痛快だが、とにかく、今年一番笑った、楽しかった、お腹いっぱいの娯楽映画。お勧め。