映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「フラガール」監督・李相日 at MOVIX六甲

1965年の、福島県常磐炭坑。石炭の需要が減り、炭坑夫達は次々と解雇されて行く。そんな中、「ハワイ」をテーマにした温泉リゾート地の建設計画が持ち上がる。代々命がけでプライドを持って炭坑を生業にして来た人々にとっては屈辱以外の何ものでもなかったが、一方背に腹は代えられない人々はフラダンサーの育成を目指す。その教師としてやって来たのは元SKDという触れ込みの平山まどか(松雪泰子)。揃ったダンサー候補は4人。その中のひとり、紀美子(蒼井優)は、フラダンサーになるならと選炭婦の母(富司純子)に勘当されてしまう。紀美子の兄・洋二朗(豊川悦司)は、炭坑を守ろうと必死だが、妹のフラダンスに賭けるひたむきさと、自分を裏切ってでもリゾート地建設に加わった友人の姿に心が揺れる。ダンサー候補達は徐々に数を増やし、やがてひと角のフラダンスチームになりつつあったが、炭坑の更なるリストラが悲劇を生み…というお話し。
脚本はオーソドックスで、元ネタは「フル・モンティ」('97)ではないかと言えば意地悪かも知れないが、それはそれとして、役者が圧倒的に素晴らしい。これまで碌な映画がなかった松雪泰子のきびきびとした女っぶり、ミイラの先生よりよっぽどこっちの方が合っている豊川悦司の男っぶり、ここぞと言う時、ケレン味たっぷり東映調な富司純子、鼻っ柱は強いのに、辛さを押し隠して笑顔をつくる蒼井優、そしてキャメラも演出も「絶対カットしない」と見惚れたに違いない彼女の見事なダンス、ダンス、ダンス!!李相日監督は、「69」('04)でも達者な演出ぶりだったが、今作では泣きのツボを外さないシュアぶりに素直に脱帽する。まさか南海キャンディーズしずちゃんにこんなに泣かされるとは。
敢えて言おう、今年ベストの大ハナマル娯楽映画。お勧め、必見。

69 sixty nine [DVD]

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