ワシントン、シークレット・サーヴィス本部。かつてレーガン大統領を体を張って守った経験のあるピート(マイケル・ダグラス)は、知識と経験では申し分がないが、女癖の悪さでライバルのデヴィッド(キーファー・サザーランド)とそりが合わない。デヴィッドはピートが自分の妻を寝取ったと思い込んでいるのだ。しかし、ピートはもっと驚くべきアフェアの渦中にいた。現役大統領のファースト・レディ(キム・ベイシンガー)と不倫関係にあるのだった。折しも仲間のシークレット・サーヴィスのひとりが惨殺され、大統領暗殺計画が露見する。更に内部からの情報が漏れていることが判明、デヴィッドはピートに疑いの目を向ける…というお話し。
大統領警護のシークレット・サーヴィスがファースト・レディと不倫関係という突飛なアイデアから始まる脚本は、その組織内部の実情を伺わせるリアルな描写が興味深い。中盤、「容疑者」になったピートが携帯電話もクレジットカードも持たずに逃亡するのだが、経験に裏打ちされた先々を読んで行動する展開は秀逸。
が、ジョンソン監督は良く言えば「手堅い」、悪く言えば「のっぺりした」演出。旧KGBがアメリカ大統領を暗殺する動機も曖昧だし、テロリストが大量にカナダ軍に化けてサミットに潜入出来た手口が描かれていないので、クライマックスの銃撃戦は唐突な印象を拭えない。キム・ベイシンガーもこれまでのキャリアからは信じられないほど「何も考えていない」女を演じていて凡庸。監督がマイケル・マンなら、トニー・スコットなら、と思うのは無い物ねだりか、いや断られたのかも。