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「サイドカーに犬」監督・根岸吉太郎 at シネカノン神戸

雪に願うこと」('06)が素晴らしかった根岸監督最新作。長嶋有の同名小説の映画化。
東京、国立市。不動産会社に勤務する薫(ミムラ)の20年前の回想から物語は始まる。ということは'80年代。愚図な夫(古田新太)に嫌気がさした妻が長女、薫を残して家出、薫と夫側に預けられていた長男との生活が始まるが、そこへ通って来るヨーコ(竹内結子)という謎の女と妙にウマが合う。オトナの事情の狭間で健気に生きて行く薫だが、ヨーコもまた行く末を模索していた…というお話し。これといった劇的な展開は無く、台詞のやり取りとエピソードで繋いで行く。想像するに原作通りなのではないか。台詞も時に書き言葉だったりもするが、しっとりとした演出がその違和感を感じさせない。しかし、「親はなくとも」なのか子供達が健気にご機嫌を伺いながら生きているのに対して、大人達がどうにもモラトリアム型なのが共感には及ばない。煙草を吸いまくる竹内も様になっていないだけに余計にそんな感じだ。根岸監督はあえて彼らを突き放している印象だ。
キャメラワークの按配が抜群で、爽やかで力みが無い分、技術の確かさを感じる。伊豆の民宿のばあさん、樹木希林が抜きん出て可笑しい。余談だが、その伊豆でヒロイン達を乗せて走っているバスが何故か神戸の市バス。「みなと銀行」のロゴが見える。

サイドカーに犬 [DVD]

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  • 発売日: 2007/12/21
  • メディア: DVD