映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「アメリカン・キャングスター」監督リドリー・スコット at TOHOシネマズ梅田

1968年のNY、ハーレムを牛耳る組織のボスが急死、その運転手を15年務めていた男、フランク(デンゼル・ワシントン)は、麻薬ビジネスで組織の頂点を目指す。折しもベトナム戦争が泥沼化しており、フランクは従軍している自分の従兄弟を巻き込み、ヘロインを米軍機によってアジアから直接輸入することに成功する。一方NY市警は彼らの賄賂によって腐敗し切っており取り締まりはあって無きが如し。業を煮やした政府は圧力を強め、州警察内に麻薬取り締まりの特別チームが編成される。正義漢ぶりがあだになって干されていたリッチー刑事(ラッセル・クロウ)がその任を拝命、組織の解明に乗り出す…というお話し。
話の骨格は「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」('85)に似ているし、本編を観ている間「ゴッドファーザー」シリーズや「フレンチ・コネクション」('71)が思い出されてしまうのは映画的自然の摂理というものである。資料によるとスタッフは実際「フレンチ・コネクション」を参考試写したらしい。しかしながら決して剽窃ではなく、あくまで'60年代末期〜'70年代のNYアンダーグラウンドの空気感をこの21世紀において精緻に再現する、という強烈なモチベーションをひしひしと感じるのだ。
役者は全員素晴らしく、157分全く飽きる事はない。時代背景のディティールは実に細かく、もっと長くても楽しめたと思うくらいだ。
長くアメリカ映画を観ていて良かったと思う傑作、お勧め。