映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「4ヶ月、3週と2日」監督クリスティアン・ムンジウ at テアトル梅田。

1987年、チャウシェスク政権下のルーマニア。とある大学生寮から物語は始まる。登場人物の全てが笑わない、血色は良くなく、窓外に見える風景はうんざりするほど殺伐としている。タバコやガムを密売する購買部のような男、ホテルのロビーで米国製タバコを売る男、ひとりの女子学生がそのホテルで部屋を取る時の実に煩雑なやりとり…そんな点描が続く。やがて彼女が恋人の母親の誕生日会を反故にしてまでルームメイトの女性の堕胎につき合おうとしていることがわかる。当時のルーマニアでは堕胎は違法、堕胎を行うヤミ医者は見つかれば逮捕拘束されるのだ。
この映画、見終わった後、プレス資料なりキネ旬の批評なりを読まないといささか理解に苦しむ展開が続く。ルームメイトの女がどうしようもない我がままでバカなのだ。このバカに何故ヒロインが献身的になるのか、本編では一切説明されない。実は体制に反逆、抵抗する為の堕胎であり、バカでどうしようもない女でも、恩を売ることで密告者にさせない、味方を得る為のオルグ活動ということらしい。
また、殆どワンシーン・ワンカットで押し切り、ふいなクローズアップで緊張感を煽る。堕胎医の鞄から抜き取ったナイフ、何か伏線になるのかと思いきや、ならない。異様に長い誕生日会の食事シーン、どうするんだと思ったらやがてヒロインが差別されていることが解る。技巧を凝らしていないようで結果的に重いストレートを投げて来る演出は新鮮。