映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

「ぐるりのこと。」監督・橋口亮輔 at シネマライズ

翔子(木村多江)のころがるような幸せいっぱいの笑顔から始まる。翔子は妊娠しており、夫のカナオ(リリーフランキー)はどこかカルーい感じで靴のリペアの仕事をこなしている。ほどなく、カナオは裁判法廷で似顔絵を書く仕事に転職、翔子の親族はこの職を転々とする男に、果たしてこれから家族を養って行けるのかと不安がっている。当人達はそれでも小さな幸せを信じているようだった。しかし1年後、二人の関係はひとつの事故を切っ掛けに変化して行く…というお話し。
橋口監督の前作「ハッシュ!」('02)は女性に対する底意地の悪い目線がどうにも好きになれなかった。今回はタイトル通り、私たちの生きているこの社会と、ひと組の夫婦の小さい世界を徹底的に見つめる客体を貫き、繊細かつ緻密な造形が時に可笑しく、時に胸をえぐるような衝撃をもたらす。
この映画には、先日死刑となった宮崎某、宅間某、サリンの麻原某を想起させる「解り合えない隣人」が登場する。そしてその「隣人」の被害者の感情も容赦なく揺さぶる。それら「ぐるり」の社会に身を置きつつ、目の前の夫、目の前の妻と分かり合おうともがくこの「小さな世界」もまた私たちの「ぐるり」に無数に存在することを喚起させる。私たちは「救い」と「救いようのない絶望」の間隙の世界に生きている。一瞬にしてどちらにも転ぶであろう危うさ。
見事だった。今必見の傑作だ。お勧め。

ぐるりのこと。

ぐるりのこと。

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村