映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「落下の王国」監督ターセム・シン at シネカノン神戸

無声映画の時代、それも草創期。スタントマンの男ロイ(リー・ペイス)は映画撮影現場で再起不能の怪我をして入院。同じ病院に、農園でオレンジ穫りの最中に木から落ちて骨折した少女アレクサンダー(カティンカ・アンタル)も入院していて、ロイになついている。ロイは自殺用のモルヒネをアレクサンダーに取りに行かせる為に、壮大な冒険物語を語り始める。続きを聞きたいアレクサンダーはロイに言われるままに薬の調合室に忍び込むが…というお話し。
愛と復讐の空想物語が世界遺産ン十箇所でロケされており、ナショナル・ジオグラフィック10年分くらいの壮大さだ。更に石岡瑛子のデザインによる、時代を超越したコスチュームが見もの。やがてこの空想物語がロイの過去とシンクロしていくのだが、やや冗長でルックに凝れば凝るほど刺激から遠のいていく感じ。しかしそれを補って余りあるのが少女カティンカ・アンタルの愛らしさ、小憎らしさ。太っちょで突進するように歩く様、なまりはきついわ間違いもあるわの英語が、天才なのか偶然なのかいざ知らず、壮大な世界遺産よりも鮮烈な印象を残す。