傑作「カジノロワイヤル」('06)の続編。監督がマーク・フォスターに代わり、前作では脚本ビリング3位だったポール・ハギスがトップでクレジットされている。スイス人マーク・フォスターとはまた奇策の選抜、キャストもひとひねりされていてボンド・ガールにしては陰惨な過去を瞳に湛えるオルガ・キュリレンコ、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグとは「ミュンヘン」('05)で共演しているどちらかというと狡猾なタレコミ屋風情のフランス人マチュー・アマルリックが敵役。何が映っているのか即座には判らないような目まぐるしい編集で展開するカーチェイスがオープニング、婚約者を殺されたボンドは表向きは公務だが、内心は復讐の焔を燃やしているという設定。歴代ボンドの持つエスプリやユーモアは影を潜め、笑顔もない。その冷徹ぶりは「殺しの番号」の名にふさわしく、英国MI-6本部には暴走とすら判断されてしまう。エコを隠れ蓑に汚い手で巨利を得ようとする敵、そのご相伴に預かろうとしているのは同盟国であるはずの米国、というあたりがポール・ハギスらしいし、現代的。前作で殺されたヴェスパーのフラッシュバックのカットくらいあった方が親切なのではと思う。しかしシリーズのイメージをどんどん変えて行く意気や良し、お勧め。
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