ニュージャージー辺り、'80年代に活躍したプロレスラーのランディ(ミッキー・ローク)は、週末のみ地方巡業でリングに立つ。ステロイド注射で顔も体もブクブク、ファイトマネーは家賃の足しにもならない。ついには心臓発作で倒れ、引退を宣言。パートで働いていたスーパーにフルタイムで働くようになるが、自暴自棄になり辞めてしまう。そして、かつての好敵手との伝説のファイトを再現する試合にカムバックしようとする…というお話し。
「ロッキー」シリーズと比べる向きもあるが、これは「どついたるねん」('87)を想起させる。開巻、キャメラはひたすらにこの落ちぶれたレスラーの背中を捉え、かつて美男子の象徴だったミッキー・ロークの変わり果てた顔を見せるのをじらす。声もひどい。ライトを極力抑え(ライト無しかも?)俳優を美しく捉えることを拒否しているキャメラがようやく彼の風貌を捉えた時、それは単に時間の流れによって老いたのではない悲哀を感じざるを得ない瞬間だ。
脚本としてはベタな進行、しかしストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)とのやりとりの大人な演出が冴えている。娘の服を買いに行くシーン、泣かせる。
褒め言葉としての「時代遅れな」テイスト、劇中「'80年代のロックは良かった、'90年代は糞だ」と言うランディに共感出来る世代は涙無しには見られないこと請け合い。マリサ・トメイ素晴らしい、こんな女優が日本にはいない、いや'80年代にはまだいたな。駄目な時代になったものだ。佳作、お勧め、但し世代を選ぶ。
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