映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「夏時間の庭」監督オリヴィエ・アサイヤス at シネリーブル神戸

フランス、パリ郊外の豊かな自然に囲まれた家。家主エレーヌ(エディット・スコブ)の75歳の誕生日を祝う息子娘、そして孫たち。長男(シャルル・ベルリング)は経済評論家でパリに住む。長女(ジュリエット・ビノシュ)はNYに住み、日本のデパート(高島屋、という台詞が聞こえた)に陶器を卸している。次男は上海在住のエンジニア、という具合。長男に遺産の整理を頼んだのち、あっけなくエレーヌは亡くなる。遺産はとても価値のある美術品ばかり。しかし、世界中に散らばってしまった息子娘達は、家を売り払い、遺品をオルセー美術館に寄付することを決める…というまるで「東京物語」('53)の後日談のようなお話し。
まず、このエレーヌの家の素晴らしさに目を奪われる。このロケセットを見つけたことでこの映画は成功したも同然だろう。しかし、美術品を丹念に映し出す映画ではなく、伝統の保守と崩壊を織り込んだ「現代フランス事情」がテーマ。芸術至上主義で文化レヴェルの高さは流石にフランス、と思いきやラストに示される苦い皮肉のような孫世代の静謐の破壊は日本の今と何ら変わりない。大音量で流れる安っぽいポップスとそれに合わせて踊る女の子達など、全く同じだ。
小津のエッセンスを盛り込み、ジュリエット・ビノシュの婚約者役にクリント・イーストウッドの息子カイルをキャスティングするなどアサイヤス監督のシネアストぶりが窺える。ただ、母エレーヌが「秘密を持ったまま死んで行く」と語る割には大叔父と寝たかどうかくらいしか秘密がなく(それとて別段どうということはない)、美術品収集にまつわるエピソードもほとんど語られないので、死によって画面から突如消え去った彼女の陰翳がその後の展開に殆ど影響を与えていないのが惜しい気はする。それでも故人を慕い続けるお手伝いのおばあさん(素敵)は泣かせてくれるが。

夏時間の庭 [DVD]

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