映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「3時10分、決断のとき」監督ジェームズ・マンゴールド at シネリーブル梅田

エルモア・レナード原作、1957年に一度映画化されている。主演のクリスチャン"バットマン"ベイルが「ダークナイト」('08)に出た前年の製作。
南北戦争後のアメリカ、戦争で片足が麻痺してしまったダン、牧畜業が不振で借金に追われていた。殺人鬼で強盗団のボス、ベン(ラッセル・クロウ)の逮捕の現場に居合わせたダンは、200ドルの報酬でベンを刑務所への護送列車に乗せる仕事に志願する。数百キロ離れたユマ駅までの道中、ベンは同行する護送隊員や探偵(ピーター・フォンダ)を隙を見ては殺して行く。それでもベンを処刑してしまうと報酬が貰えないダンは非情に徹し、自らは決して隙を見せようとはしなかった。一方、ボスを取り戻そうと強盗団一行が追って来る…というお話し。
前半、ウォルター・ヒル監督を思わせるシャープなカット捌き、オーソドックスな西部劇タッチ、そしてピーター・フォンダ登場とマンゴールド監督のアメリカ映画愛が横溢していて画面に吸い込まれる。
複雑な悪党キャラクターなのにひょうひょうと演じるラッセル・クロウ、甲高い声で気色の悪い強盗団の番頭役ベン・フォスターとキャスティングはややライトな印象、というのもこの手の西部劇だとその昔はウォーレン・オーツだとかロバート・ライアン、あるいはクリント・イーストウッドといった埃臭いヘビー級ワイルドガイがレギュラーポジションだった。こうして見るといまの俳優全体がマイルドになっていることに気がつく。
後半、銭の為なら味方をも殺すベンと子供の為に父としての尊厳を賭けて戦おうとするダンの間に絆が生まれ、銃弾の雨に晒されながら逃走する「定石」に不覚にも鳥肌が立つ程心が動いた。
'70年代まではこのジャンルでこんなレベルのアメリカ映画はもっとあった、しかし現代に於いては掃き溜めに鶴(その正統な地味さが敬遠されて日本公開も遅れたのだろう)、それ故各批評で評判が良いのかも。佳作、男子向けお勧め。