映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「クヒオ大佐」監督・吉田大八 at 国際松竹

 昭和の時代にしばしば新聞沙汰となった実在の結婚詐欺師、その名も自称クヒオ大佐をモデルに描く。
ひとを食ったようなオープニングにいやが上にも期待が高まったが、何故かくもチンケな男に女性達は騙されたのか、という人類学的興味には踏み込んでは行かない。いや確かにそれほど賢い男ではないのだが(その点は笑える)、堺雅人が演じると、結構軍服姿はカッコいいし何より男前だ。弁当屋の女社長(松雪泰子)がのぼせるのもむべなるかな、だ。実は私は真夏の渋谷でクヒオ氏を目撃したことがある。堺雅人よりはナインティナイン岡村隆史似であったと記憶している。軍服はヨレヨレで何より真夏でも冬服だったことがチンケさに輪をかけていた。「キネマ旬報」'09年10月下旬号の堺雅人の監督批判とも受け取れる衝撃的なインタビューによると、堺氏の演技プランと監督のそれとは随分開きがあったようだ。空疎な、あまりに空っぽな男として描かれているクヒオ大佐の「軽さ」は、堺氏にとっては苦痛だったようで、それは映画を観ていて微かに伝わって来る。「しとやかな獣」('62)で小沢昭一の演じた強烈にインチキくさい金髪ガイジンを想起した。
吉田監督は前作「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」('07)でもそうだが、デジタルなペラーっとしたルックがお好みのようで、本作でも確信犯的にチープな印象にしている。新井浩文満島ひかり好演。


「被災地NGO恊働センター」で「神戸再生フォーラム」事務局会議。