ナチス占領下のフランスの田舎町。"ユダヤ・ハンター"の異名を持つランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)は、あるユダヤ人家族を皆殺しにするが、ひとりの少女を取り逃がす。
場面変わってヨーロッパ戦線。ヒトラーが血眼になって追う"ナチ・ハンター"こと米軍レイン中尉(ブラッド・ピット)率いるバスターズ軍団は、次々と戦績を上げていた。時が変わって1944年。パリで映画館を営むミミュー(メラニー・ロラン)はあるドイツ兵ツォラー(ダニエル・ブリュー)に見初められる。彼女こそかつて一家をランダ大佐に殺された少女ショシャナであった。戦争の英雄であるツォラーは、自身が出演した国策映画のプレミアショーをその彼女の映画館で開催すると言い出す。そのショーにはヒトラーを始めドイツ軍の要人が全員出席。情報を得た英国政府はバスターズを潜入させようとする。一方復讐のチャンスを得たショシャナは、映画館全部を燃やしてしまおうと計画する…というお話し。
全部で5つのチャプターに分けられて、エピソードを追うごとに全体的に話しが繋がって行き、クライマックスで一同に会する、という展開。マカロニ・ウェスタン調で始まり、かつて大量につくられた第二次世界大戦モノの映画のフレーバーを振りまきつつアメリカ映画の王道的サスペンスも盛り込む、というタランティーノ趣味が毎度のことながら満開…いや満開というほどでもなかったという印象。テーブルを挟んでの会話シーンがやたら多いのだが、いつものような本筋と関係ない蘊蓄話しで笑わせることはなく、生死を掛けたサスペンスが主眼。
とはいえ冒頭のユダヤ人狩りのシーン以外は話しが進めば進むほど冗長な印象。どうも期待されるタランティーノらしさを自身で外そうとしている気がする。ダイアローグがしつこい割にはアクションは実にあっさりしているのでそれほどカタルシスが感じられない。裏設定だが、1944年の6月といえばノルマンディー上陸作戦。8月にパリ解放だからこの映画の設定はその間、ということか。そんな時期にヒトラーを始めドイツ国防軍の将軍達が一堂に会して映画を観るなんて大嘘もええとこ(そしてそれを裏付けるような展開となる)だがそれがタランティーノの「オレの好きな映画」なのだろう。
ヨーロッパ各国の言語にこだわった演出は溜飲を下げたし、キャスティングは素晴らしい。英、仏、独、伊全部の言葉をあやつったランダ大佐役のクリストフ・ヴォルツ天晴れ。