映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「フローズン・リバー」監督コートニー・ハント at シネマライズ

ニューヨーク州最北端。先住民族モホーク族(映画の中ではIndianと呼ばれている)の保留地とその境界の町。
ギャンブル好きの夫に、家のローンを持って逃げられたレイ(メリッサ・レオ)。高校生(中学生かも?)の息子と、歳の離れたその弟がいる。1ドルショップに勤めているレイだが食べるものにも事欠き、ポップコーンで朝食を済ます。夫が乗り捨てた車を運転するモホーク族の女ライラ(ミスティ・アップハム)をつかまえたレイだが、逆にある「仕事」に巻き込まれる。その車を使った不法滞在者の移送である。最初はライラの言いなりだったレイは、生活に追われるあまり「仕事」に手を染めて行く…というお話し。
ブルートーンの、女達の横顔を捉え続けるHDキャメラは見た事がないシャープさだ。車のブレーキランプの異様な赤も効果的。先住民族の保留地は州法が適用されない治外法権であったり、先住民族特有の「子育て」の概念など知られなかったアメリカの一面が新鮮である。そして現代アメリカの貧困の実態をも知らされる。
この重苦しさと、雪深いロケーションにポール・シュレーダー監督の「白い刻印」('98)を想起させられたが、資料によるとコートニー・ハント監督の師はポール・シュレーダーだとのこと。そうと知ると腑に落ちるテイストだが、パキスタン人夫婦の赤ん坊を巡るエピソードは女性監督らしい温もりで、グッと来てしまった。
リアリスティックな貧困を描くノンスター新人監督映画ということで配給会社が手をつけなかったのを、映画館シネマライズが自主配給した。http://www.shibukei.com/headline/6649/
どうでもいい映画が跋扈する現在、この映画を見た人が少しでも語り、書き、知らせることで映画を巡る状況が変わるかも知れない。
いま最も重要な映画、傑作。必見。