映画的日乗

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「息もできない」監督ヤン・イクチュン at シネマライズ

韓国、ソウル郊外か。学生の政治活動の妨害、借金の取り立てなど荒っぽい仕事が生業のサンフン(ヤン・イクチュン監督・主演兼任)。幼い頃激しいDVで妹と母親を失う。父親は懲役15年。このサンフンと偶然知り合った女子高生ヨニ(キム・コッピ)。ヤクザなサンフンに喰ってかかる程の気性だが、引きこもりのような父親と、働かず金を無心する兄と暮らしいてる。サンフンには姉がおり、甥っ子はサンフンになついている。折しも懲役を終えたサンフンの父が出所。サンフンは家に帰って来た父親を叩きのめす。一方、ヨニの兄はサンフンの組について取り立ての見習いを始める…というお話し。
グラグラと揺れる、構図などおかまいなしキャメラ、殴り殴られるショットの痛みは、暴力はそんな美しいものではないと言わんばかりの迫力だ。
チャップリンばりに製作・監督・脚本・主演・編集を兼任するヤン・イクチュンの人生そのものが塗り込められていることは明白だ。ここでは暴力の連鎖よりも、愛の不在の孤独の方が痛い。こんなにリアルな悲惨は、経験した者のみに語り得るものなのだろう。ヤクザから足を洗おうとする辺りから展開が読めてしまうが、それでもここにある力づくの「俺の人生こんなもの」はヤン・イクチュンという人間の血流と体温が確実に伝わって来た。佳作。