映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「クレイジー・ハート」監督スコット・クーパー at シネリーブル神戸

 ジェフ・ブリッジスの昨年度オスカー主演男優賞獲得作品。
 開巻はニューメキシコ、ボウリング場の片隅でのライブにやって来たカントリー歌手バッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)。好きなウィスキーを買う金もなく、ライブの途中で吐いてしまうほどヨレヨレだ。アル中でヘビースモーカー、自分の運転する車で全米を巡業している「昔の名前で出ています」歌手。彼のファンだという男の姪ジーン(マギー・ギレンホール)が地方紙の記者をしていてバッドへのインタビューを繰り返している内に恋に落ちる。そんなある日、バッドの弟子で今や大スターとなっているトミー(コリン・ファレル)の前座話しが舞い込む。少し運が向いて来たかと思われたが、止められない酒のせいで大失態をやらかし、大切なものを失う…というお話し。
 即座にイーストウッド「センチメンタル・アドベンチャー」('82)を想起させるモチーフだが、こちらの主人公の方がマジのヨレヨレぶりというか、痛々しい。何故か周りは善人ばかりで、海千山千のマネージャーも何とか彼の為に良い仕事を取って来るし、弟子のトミーも師匠が立ち直るのを懸命にサポートする。恋人のジーンも実にけなげで献身的、途中から出て来るバー経営者のロバート・デュヴォルも面倒見が良い。全体的に浪花節というか、下町人情たっぷりだ。それらの善意にすがり、時に裏切ってしまって孤独を深めてしまうエエトシしたおっさんジェフ・ブリッジスが闇の底から詩を紡ぎ、歌い上げるバラッドが実に泣かせる。ラストもまた苦いバラッド調でこれまた琴線に触れる、いや触れたあなたはオッサン確定でしょう。
 24日間で撮られたという低予算インディーズ、ジェフ・ブリッジスとロバート・デュヴォルはプロデューサーを兼任しているところを見ると、彼等がお金を工面して「作りたくて作った」作品なのだろうと推測される。
 佳作、お勧め。

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