映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「アウトレイジ」監督・北野武 at 109シネマズHAT神戸

 黒塗りの高級車のボンネットに打ち込まれるタイトルのクールさ。
 センス、センスで突き進む北野武監督。ストーリーは特に凝ったものでもなく、ヤクザ組織の上部と下部組織のせめぎ合いを描いている。鈴木慶一の音楽も北野センスの賜物、血が飛び、指が飛ぶのに痛々しさよりは現代美術のパフォーマンスのようにすら見える。
 今年のカンヌ映画祭で「深作欣二監督と同じことはしない」と発言していた北野監督だが、映画演出においてはそうでも、ここに描かれている世界は'70年代に深作監督と組んで営々と実録ヤクザ路線を書き続けた笠原和夫の描いた世界とさほど変わらない。小日向文世扮する刑事が大友(ビートたけし)に「そんな古いヤクザみたいなこと云々」と言う台詞があったが、そう、意外に「古いヤクザ」なのである。あの頃の菅原文太ビートたけしで、金子信雄北村総一朗だ。唯一そのアンチテーゼとして英語を操るインテリ然とした石原(加瀬亮)が登場するが、彼とて時に暴力を爆発させる。
ここに描かれる殺戮合戦は、政治的にも民族的にも国全体が内向的になっているニッポンの縮図としてのヤクザ社会とも受け取れるし、二言目には「癒し」だの「癒され」だのと疲れていることをアピールする脆弱な国民になり下がった(つい20年前まで誰もそんなこと言わなかった)ことへの唾棄でもあると見た。
 これまで説明的なカットを極端に嫌った北野監督、今回は実に丁寧かつスムーズな語り口に徹していて、良い意味でB級映画の面白さに満ちている。

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