映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「シングルマン」監督トム・フォード at シネリーブル神戸

ファッション・デザイナー、トム・フォードが自ら映画製作会社を設立、初監督した。クリストファー・イシャーウッドの同名小説の映画化。
1960年代初頭、大学教授のジョージ(コリン・ファース)は、長年連れ添ったジム(マシュー・グード)を事故で喪って以来、自殺願望が募る。思い出すのは甘美な過去、慰めてくれる女友達(ジュリアン・ムーア)との語らいは微かに孤独を癒すものの、未来に希望を見いだせない。そんな折、大学の学生ケニー(ニコラス・ホルト)に誘惑され、暫し自殺を思い止まろうとするが…というお話し。
徹底してビジュアル優先、キャストの美青年美少年を含め、細部に至るまでルックは凝りに凝っている。
現在進行形の世界は脱色した砂漠のような色彩、しかし過去の美しい想い出になるとナチュラルな色使いではない鮮やかなアンバー色と赤。そしてスペイン語の美青年、ケニーとの時間もまた艶やかに色彩を帯びる。ジョージにとって生きている時間とは恋をしている時間のみであり、ひととき、色づくという演出。
監督トム・フォード自身がゲイであることは自明で、比較は酷かも知れないが「ベニスに死す」('71)の私家版に挑んだこの繊細な感覚は、今の映画界に於いて新鮮。

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村