映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「執炎」監督・蔵原惟繕 at シネ・ピピア売布

1964年日活作品。宝塚映画祭プレ企画「煌めく日本映画の女優たち vol.3」上映作品の1本。
加茂菖子の原作は絶版、DVD未発売。
資料によると四国の漁村、となっているが登場人物の言葉は京都風でもあり中国地方のそれのようにも聴こえた。
エンドロールのクレジットによるとロケ地は主に北陸地方である。また、「映画芸術」誌2003年夏号によると本作は浅丘ルリ子百本記念大作で、チーフ助監督神代辰巳以下演出部は7人体制だったらしい。
平家の落武者の末裔の美しい娘きよの(浅丘ルリ子)と、網元の長男拓治(伊丹十三)が激しい恋に落ちる。やがて来る太平洋戦争、徴兵。不治といわれた拓治の戦争の傷を献身的に看病し完治させたきよの、しかし再び徴兵された拓治は終戦直前に戦死。きよのはその献身愛故に拓治を死なせてしまったと自責し、発狂してしまう。健丈でなければ死なずに済み、健丈故に命を落とす戦争の理不尽と一途な純愛がリリカルに描かれる。
きよのの実家は昼間でもひどく暗いロケセット撮影。この当時では恐らくタブーだったと思われる自然光優先のリアリスティックなルックから始まり、旧余部鉄橋(兵庫県)でロケされている情感あふれるルックへと切り替わる。平家の末裔の悲恋というロマンティシズムと土地の土俗性を描くリアリズムが絶妙に溶け合って陶然としてしまう。
最早死語だろう、メロドラマの結晶のような作品。
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