芥川龍之介の原作を現代の台湾に舞台を移した川口浩史監督デビュー作。撮影の順番は不明だが、「ノルウェイの森」と同じリー・ピンビンが撮影監督。
どんなに精緻なセットを建て、CGで凝っても郷愁を誘う日本の原風景の空気感を今の日本で描くことは至難の技である。川口監督がその空気感を台湾の田舎町に求めたのは自明だ。ましてこの地で侯孝賢監督と数々の名作を放ったリー・ピンビンとのタッグ、ざわめく木々から洩れる光の美しさや家屋の佇まいの郷愁に期待しない方がおかしい。期待に違わずたっぷりとその雰囲気を湛えたルック、日本から来た無愛想な子供に大しても凛とした敬語を使う老人達の日本語に安堵感がよぎる。何とも言えずほっとする、のだ。
芥川のトロッコ、というより台湾の老人の日本統治時代への愛憎と、父を亡くし、母と折り合えずにいた日本の現代っ子の成長譚が前面に出ている。誰が主役ということもなく、登場人物各々の気持ちの有り様が丁寧に、淡々と描かれていて、辛い気持ちも含めて心地良かった。
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