映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「武士の家計簿」監督・森田芳光 at 109シネマズHAT神戸

原作は小説ではなく新書。歴史的事実を基にストーリーを新たに組み立てている。脚本は小説家出身の柏田道夫で、本作の成功はこの精緻かつ骨太な脚本に負うところが多い。
 テーマは「身の丈」といったところか。加賀藩の下級武士、猪山家。代々のお城勤め、今で言う官僚である。給金以外の収入は見込めないのに知らず贅沢が身に付き、借金が収入の二倍に。「そろばんばか」と渾名される猪山直之(堺雅人)は妻(仲間由紀恵)を娶り、長男が生まれたのを機に「大改革」を行う。長男成之(大八木凱斗、成人してからは伊藤祐輝)の着袴の祝いの儀の折、祝い鯛を紙に描いた絵にして済ます。そして一家の家財の殆どを売り払う決心をするのだ。
借金返済を機に成之への徹底した合理主義教育を施す直之。あまりの厳格ぶりに反発を覚える成之だが、時代は幕末の乱世を迎え成之の運命を変える…というお話し。
絵に描いた鯛を一家揃って手に持ってヒラヒラさせる辺りは恐らくモリタ流であろう、淡々と算盤を弾き帳簿をつけるシーンが延々と続く中「貧しいながらも」楽しく過ごすポジティブぶりが心地よく、時にかえって涙を誘う。バブル期に「木村家の人びと」('88)という映画があった。時代がつくらせる映画という意味では、景気低迷期であり国家が破産寸前の財政危機である現代がつくらせた「武士の家計簿」と言えよう。蛇足だが森田監督もバブル期に「そろばんずく」('86)という景気の良過ぎる作品があったな。
七つ玉の算盤、映画が始まってから一度もアップで正面から捉えられることがない。これは何か算段があってのことだろうと推測していたら…やはり!だった。佳作、お勧め。 

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