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「人生万歳!」監督ウディ・アレン at シネリーブル神戸

ここ数年、ヨーロッパを舞台にした作品ばかりだったウディ・アレン(アメリカだけでは投資が充分集まらなかったらしい)が久しぶりにNYに戻っての最新作。原題は"Whatever Works"、「(人生)何でもあり」といったところか。
お話しは頭脳明晰故にリクツをこいては他人に毒舌をまき散らすボリス(ラリー・デイヴィッド)が、自宅の階段の下にうずくまっていた美少女メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)を家に入れてしまったことから始まる。素直な心情を決して吐露せず悪態をつくボリスだが、正反対に素直で優しく陽気なメロディと結婚へと至る。しかしそこへメロディの母親(パトリシア・クラークソン)が現れて意外な展開に。
突然キャメラ目線で画面に向かって(つまり観客に向かって)話し出す主人公は「アニー・ホール」('77)と同じだし、美少女好きのくせに屁理屈こねて冷たくするのは「マンハッタン」('79)と同じ。交際相手がシャッフルされて「収まるところに収まる」のは「ハンナとその姉妹」('86)だ。
この原点回帰テイストには驚いたがそれもそのはず、キネマ旬報'10年12月下旬号の井上一馬氏(アレン研究家の第一人者)によると、「アニー・ホール」と同時期に書かれた脚本だとのこと。道理で。
NYで久しぶりに撮るとなって、NYでしかあり得ない人間関係、言い換えればNYという環境が彼等をそうさせているという脚本を埃はたいて引っ張り出して来たアレン。20年前なら当然主人公は自身が演じたであろう。しかし御歳75歳、ラリー・デイヴィッドに演じさせるにあたりジューイッシュ自虐ギャグも極力減らしてこれで正解だったと思う。佳作、お勧め。

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