映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ザ・タウン」監督ベン・アフレック at 丸の内ルーブル

 ボストン、地下鉄のハーヴァード駅の表示から始まる。先日の「ソーシャル・ネットワーク」と同じ舞台ながら、実はこのチャールズ・タウンという街の裏の顔は銀行強盗多発地帯。ダグ(ベン・アフレック兼任)を首領とする銀行強盗チームは証拠を一切残さない、人を殺めないプロ集団。しかし、ある銀行で想定外の事が起こり、支店長であるクレア(レベッカ・ホール)を人質に取ることになる。クレアは程なく開放されるが、後日ダグは念のため彼女を尾行し、やがて言葉を交わすようになる。一方、このプロ集団を検挙する為、FBIは彼等を監視。実は彼等は代々この町に続いている闇の組織であった。ボスは花屋を営むファギー(ピース・ポスルスウェイト)。親の代から逆らえないダグだが、クレアと恋仲になったことで稼業から足を洗い、町を出たいと思うようになる。しかし幼馴染みで仲間のジェム(ジェレミー・レナー)もファギーもそんなダグを許すはずもなく、ダグは危険なヤマを踏むことになる…というお話し。
 アフレック監督、強烈なアップショットを細かく繋ぐ特異な演出。人物の全身を捉えるフルショットは数えるほどだ。この手の銀行強盗モノの近作と言えばマイケル・マン「ヒート」('95)が圧巻だったが、あの映画でのLAの市街戦を越える(きっと意識したに違いない)このボストンの市街戦は見応え充分。お代分はモト取れる。
 そしてボストンに於けるアイリッシュ貧困層が営々と闇組織を構成していたというストーリー(原作:チャック・ホーガン)の着眼は、ともすればキャラクターのバックボーンを描かないことで成立する「プロ犯罪集団もの」と一線を画する。夫々の悲惨な幼少年期をきちんと描いてみせた手腕は脚本(アフレック、ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカード)共々素晴らしい。蛇足だが全体にドン・シーゲル「突破口!」('73)のフレーバーを感じたのは私だけか。
 今年1月に亡くなったピート・ポスルスウェイト、これが遺作ではないそうだが、年季の入った悪党ぶりは流石。惜別の感。
佳作、お勧め。
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