角田光代の同名小説の映画化。
原作を未読なので映画と同じかどうかはわからないのだが、時系列をずらし、過去と現在が行き来する構成。母性愛、という言葉で語るだけでは表層的過ぎるほど、ここに描かれる現代は日本社会のある断面でもある。
「サリン事件以降」という台詞が出て来るが、思えばあの1995年の阪神淡路とサリン事件からこの国は迷走しているのであろう、ここに出て来る女性は誰一人晴れやかな表情をしない。各々の不幸と悲運をきっかけに迷路を彷徨い続けている顔だ。口を半開きにして時に死んだ魚のような目をする児童誘拐犯永作博美を初め、井上真央も小池栄子も素晴らしい。愛すること、愛されること以上の幸せはないことを教えてくれる。永作が逮捕された時の台詞、ずどんと決まってたなぁ。
テレビドラマの延長やら拡大やら幼稚なマンガの安直な実写やらといった悪貨が良貨を駆逐してしまっている日本の映画界に於いて、ちゃんとプロデューサー、監督、脚本家、そして優秀なスタッフがきちんとつくった映画。
傑作、お勧め。
にほんブログ村