映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ナッシュビル」監督ロバート・アルトマン at 新宿武蔵野館

 1975年、未DVD化作品の画期的リバイバル上映。恥ずかしながら初見。
 テネシー州ナッシュビル。例に依ってアルトマンは複数箇所の場所、レコーディング・スタジオと空港での人間模様のカットバックがオープニング、そしてそれらの間を縫うように民主党大統領候補の選挙カーが主張を滔々と述べて行く。漫然と聴かされていたその文言は、やがてこの南部の保守的な町になじまない革新的なものであることに気づかされる。バプテスト派が(民主党の)ケネディの勝利を阻んだ、という台詞。それほどまでもこのプロテスタント右派が多数派であることを、当時既に充分シニカルに映ったであろう町の実力者にしてカントリー歌手のおっさんのファッションと行動に反映させている。そこへ食い込もうとする民主党候補者のブレーンのあの手この手。ナッシュビルに集うカントリー歌手達がこの選挙運動に利用されつつあることが見えて来る。1975年というと前々年に米軍がベトナムから完全撤退、サイゴン陥落でベトナム戦争終結した年。この映画がそのことと無縁な訳はなく、あの頃のアメリカの病理がラストに込められている。
 しかし30余年後の現代に於いても、河野博子「アメリカの原理主義」堤未果「貧困大陸アメリカ」にあるアメリカとこの映画の世界がピッタリ重なり合うことに暗澹となる。
あの時代を知る人々の微苦笑と、知らない若者の鼾(楽しい音楽映画と思ったか)が交差する満席の武蔵野館、それでも人生は続く、アメリカは続く。
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ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

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