映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「アジョシ」監督イ・ジョンボム at 109シネマズHAT神戸

陰鬱な無表情を貫く「質屋」ことチャ・テシク(ウォン・ビン)、アパートの隣家にはとんでもないヤク中のダンサーと何故か賢そうな娘ソミ(キム・セロン)が住む。そのダンサーが働くクラブで組織が麻薬の取り引きをしているのだが、ある男にそそのかされてダンサーは麻薬を横領、そこから悲劇が始まる。ダンサーは娘ソミと共に拉致され、テシクはソミを救う為に組織の指示に従ってブツを運ぶが、囮にされていただけであった。組織は警察に一網打尽にされ、ダンサーは眼球と臓器を抜かれた死体で発見される。罠を仕掛けたのは組織の下部にいたマンソク兄弟。彼等は臓器売買と覚せい剤製造で凌ぐ悪党。ソミは彼等の手に落ち臓器を抜かれる危険に晒される。テシクはソミ奪還の為に闘いを挑む。折しも警察はテシクが軍の特殊部隊に居た事を割り出す…というお話し。
「レオン」('94)あるいは「グロリア」('80)や「イースタン・プロミス」('07)を容易く想起できるシチュエーションだがここでは韓国的な情念の爆発が桁違いだ。テシクの過去についてはここでは伏せるが、警察が報告する「視察した軍の上層部が目を背ける程残酷な殺し方を修得している」という台詞が後半実証される辺りが見事、驚嘆の殺しっぷりとなっている。また相手のマンソク兄弟の極悪ぶりもメーターが振り切っていて天晴れ。「イースタン・プロミス」の斬り合いも相当痛かったが、これははそれを凌駕したな。
ラストに示すある「仕掛け」を「絆創膏一枚」の伏線で観る者の溜飲を下げさせる脚本もニクい。毎度言うのも嫌だがこのレベル、日本映画は勝てない。
佳作、お勧め。

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