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映画、食、人。西に東に。

                         

「ミケランジェロの暗号」監督ヴォルフガング・ムルンベルガー at TOHOシネマズシャンテ

 1943年の欧州戦線。パルチザンの夜襲を受けて、ナチスドイツの輸送機1機が墜落する。乗組員の殆どが死ぬが、一人のナチス将校と一人のユダヤ人が助かる。ナチス司令部はこの二人を何としても保護せよ、と地元の部隊に命令を下す。時は遡り、戦前のウィーン。ユダヤ人画商の息子ヴィクトル(モーリッツ・ブライプトロイ)とルディ(ゲオルク・フリードリヒ)は幼馴染み、成人してからも親友関係だったが、ナチスオーストリア侵攻が現実味を帯びて来た矢先、ルディはナチスに入隊してしまう。ルディはヴィクトルの家の使用人の子だったことをずっと負い目に感じていたのであった。ルディはヴィクトルの一家にミケランジェロの貴重な絵があることを上司に密告、それを没収しようとする。ヴィクトルの父ヤコブ(ウド・ザメル)は贋作をつくり、ナチスに引き渡す。その絵は、ミケランジェロの生誕国であるイタリアのムッソリーニに献上されるものであった。が、程なく贋作であることがばれ、ナチスは面目丸つぶれとなり、24時間以内に本物を捜し出せ、とルディに命じる。強制収容所にいたヴィクトルは本物の在処を母親ハンナ(マルト・ケラー)の自由と引き換えに教えるという取り引きに出るが…というお話し。
 ウェブサイトによるとムルンベルガー監督は'60年生まれ、脚本のポール・ヘンゲが'30年生まれのユダヤ人。恐らく過酷な迫害体験を持つヘンゲ氏の、あの頃を知る描写を戦後生まれの監督がマイルド風味にブレンドした感がある。音楽も全体的に軽快で重苦しさを避けている。
中盤に展開する奇想天外なアイデア(書かない方がこれから見る方の為)は、これまでの数多あるユダヤ人対ナチスの映画にはなかったもので、この辺りはムルンベルガー監督の手腕なのだろう、民族迫害の悲劇なのに洒脱なのだ。なお資料によるとドイツ人とオーストリア人ではドイツ語の発音が幾分違うらしく、その辺は我々には判らない面白さを含んでいる可能性もある。とまれ、命懸けで美術品を守るといったあたりがやっぱりヨーロッパ、オーストリアらしい。
 素晴らしき「ゴーストライター」を見たばかりなのでついポランスキーなら、と思わないでもない「軽さ」はあるものの(無い物ねだりの映画マニアの悪い癖御免)退屈はしない、面白い。
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