映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「カンパニー・メン」監督ジョン・ウェルズ at シネリーブル神戸

 長らくTVシリーズ「ER」をプロデュース&監督して来たジョン・ウェルズ監督の劇場用映画デビュー作。
激しく動き回る「ER」とは正反対の静かなドラマ。キャメラは名手ロジャー・ディーキンス、ここではCompany(会社)を徹底してシルバー(それぞれの会社)と白(就職斡旋センター)で埋め尽くし、会社人間のスーツのダークブルーとのアンサンブルによる無機的なルックで非情感を作り出している。
 ボストンの総合商社が舞台、リーマンショックでリストラされたボビー(ベン・アフレック)と、会社側のジーン(トミー・リー・ジョーンズ)の日常を交互に描く。アメリカ映画も遂にこうした山田太一のドラマのような淡々とした市民の悲哀を描くようになったか、と予告編を見て思っていたが、本編ではやや詰めが甘い。全て思った通りに展開する。この人死ぬな、と思ったらその通りになった。一方、一流会社への再就職に拘り家計の危機に瀕してもプライドを捨てきれないボビーが妻(スザンヌ・リコ)から息子がクリスマスプレゼントのTVゲーム機を返品したことを聞いてようやく義兄(ケビン・コスナー、ええ味出してる)の営む左官業に就業する、という展開を台詞だけで済ますのはどうなのだろう。長男が返品するところを画で見せた方がお父ちゃんの決断を強調出来たのでは?中間管理職フィル(クリス・クーパー、ええ仕事)の娘も前フリで「イタリアに卒業旅行行くの」と言わせといてフィルの葬式では娘にキャメラを向けない。どうも細部が「あっさり」なのだ。ボビーの奥さん、アメリカ映画史上指折りの良妻賢母、大和撫子並みの尽くしっぷり。ケビン・コスナーの義兄はさしずめ下町の棟梁か。何かホントに日本のドラマのようだった。悪い映画ではない、役者はみんな良い。
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