映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「デビルズ・ダブル-ある影武者の物語-」監督リー・タマホリ at シネリーブル神戸

 オランダ=ベルギー合作で監督がニュージーランドリー・タマホリリー・タマホリ監督と言えばかの「戦場のメリークリスマス」('83)の助監督から「007/ダイ・アナザー・デイ」('02)の監督にまで立身出世しながらご自身の趣味で警察のご厄介になった御方。その性癖はいざ知らずコテコテに泥臭く押しまくる演出が身上という印象。そんな監督にぴったりの脚本と思われたのか、サダム・フセインの息子ウダイ(ドミニク・クーパー)とその影武者ラティフ(クーパー二役)の奇妙な関係を描く。
 イラン・イラク戦争フッテージに続き、ウダイの同級生で顔の似ているラティフがスカウトされる。抵抗むなしくラティフはドイツ語を話す医師団から整形手術を受ける。ここで「ホーネッカーは大丈夫か」という台詞、時代が旧東独の崩壊直前の'88年頃と判る。レイプ、麻薬と悪逆非道の限りを尽くすウダイ。たまに父サダムのカミナリが落ちるがどこ吹く風。その傍らで耐えに耐え忍ぶラティフとの立ち位置に微妙な変化が訪れるきっかけが湾岸戦争。コカイン中毒で呂律も回らないウダイに代わってラティフが前線の兵士を鼓舞する演説をぶつのだ。以降ウダイはラティフを粗末に扱えなくなり、ウダイの女もラティフになびき始める。この辺りがクライマックスでそこに至るまでの悪趣味な描写がしつこく、後半はよくあるガン・アクション映画に終止してしまった為全体にコンパクトな印象。原作者が実在するラティフなのでこれが事実に近いのであろう。ストーリーをいじくる訳にはいかなかったか。それにしてもあっぱれなのはドミニク・クーパーの二役ぶり、化けっぷり。いつも思うが俳優のレベルは英国出身が一番。

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村