映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「はやぶさ 遥かなる帰還」監督・瀧本智行 at 109シネマズHAT神戸

私ですらうっすらと知っている「はやぶさ」の物語を複数の映画会社が共作する中東映は瀧本監督、脚本・西岡琢也、撮影・阪本善尚、プロジェクトマネージャー兼主演・渡辺謙という一流ベテラン映画屋という布陣でつくりあげた。
怒濤の大感動物語としてつくることも可能であっただろうがその点を注意深く避けており、JAXAの山口教授(渡辺謙)の行動を中心に淡々と重ね上げて行くストーリーライン。時に山口教授は傍観者然としていて、広報担当の丸川教授(藤竜也)や、イオンエンジンの開発者藤中(江口洋介)とその後輩でNECに勤める森内(吉岡秀隆)が純粋かつ熱くプロジェクトを遂行して行くという俯瞰的な構成が成功している。そこに「はやぶさ」の部品の試作品を作っていたという町工場の親父(山崎努)とその娘で朝日新聞記者宇宙担当の井上(夏川結衣)のサイドストーリーが絡み、井上の息子の宇宙科学への開眼を予兆させることで「この国の未来」への希望を表現している。
ポイントポイントで役者芝居の見せ所があり白眉は何といっても渡辺謙山崎努の偶然の出会いと語らい。どうということのない会話に両者の人生の来し方をにじませるという邦画の王道が味わい深い。
山崎努の町工場を辞めて行く老工員達のリアルな顔つき、吉岡秀隆の「私はメーカーの人間です」のひと言の哀切、科学啓蒙映画に非ず、役者芝居の映画とも言えよう。
「我々はNASAの十分の一の予算でやっているのです」と綻びだらけの宇宙基地で語る山口教授の姿は、ハリウッドの十分の一の予算で老朽化した撮影所で汗する日本映画界そのものに重なって見えた。ハリウッドと行き来する渡辺謙氏に言われると余計そう感じてしまって身につまされる。

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