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「おとなのけんか」監督ロマン・ポランスキー at シネリーブル神戸

ゴーストライター」('10)で技量の粋を見せつけた名匠ポランスキーの最新作。
原題"CARNAGE"を辞書で引くと「大虐殺」とある。原作はフランスの舞台劇だがポランスキーはNYに舞台を置いた。
とは言え彼は米国入国禁止の身、ロケはフランスで行われたようだ。冒頭とラストの公園の後ろの海岸線を走るイエローキャブはCGか。
資料によるとポランスキーは舞台劇を舞台劇のまま撮ると宣言していたらしいが、冒頭の公園で起きる「事件」は彼らしい映画的、見事に映画になっている1カット。
そしてキャメラはとある夫婦の住むマンションに入りラストの公園のカット(エンドクレジット)に戻るまで一歩も出ない。趣味の良いマンション室内のセットデザイン、何とコッポラ組の巨匠ディーン・タヴォラリスポランスキー79歳、タヴォラリス80歳、同世代という訳か。今や映画的良心、良心的映画はこれらの人々によって支えられている。
さて、子供の喧嘩に端を発して大人の大喧嘩に発展して行く訳だがポランスキーはニューヨーカー的なスノビズムを嫌悪し、嗤う演出。誰にも感情移入出来ない反面、登場人物4人全員が「自分は常識人」と思っている辺りが観る者の自意識を突く。ウディ・アレンならもう少し愛があるかも。
役者達は当代一級、彼等もまたポランスキーに巡り会えた幸運を全身で喜ぶかのようなややリキの入った演技で応える。特にジョディ・フォスターの神経質ぶりは凄まじい。エンドクレジットに3Dキャメラのスタッフリストがあったが、3D版が存在するのだろうか(撮ったけど止めちゃったか?)。だとしたらあのケイト・ウィンスレットの●●(敢えて伏せます)は3Dへ向かう時代への皮肉たっぷりな「異議申し立て」か…というのは考え過ぎかな。佳作、お勧め。

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