映画和日乗

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「コーマン帝国」監督アレックス・ステイプルトン at テアトル梅田

ロジャー・コーマン、御歳86歳。
B、C級映画を量産していた、そして現在もつくり続ける映画プロデューサーの一代記を描くドキュメンタリー。
彼の名を知ったのは比較的早く、'70年代には結構その作品をリアルタイムで観ている。神戸には三映というBC級洋画専門館が阪急三宮駅高架下にあって足繁く通ったものだ。
本作を観てその当時観たものの映像の記憶がすっかり消ええていたことを自覚したが、それでも「デスレース2000年」('77)の書き割りで描かれた未来都市(といっても現在ではとうに過ぎてしまった2000年)のカットは覚えていた。
コーマンスクールと呼ばれた現在ではA級とされるハリウッド映画人達のファームであり、現場で覚える金銭感覚=「娯楽映画を予算内でいかに安く仕上げるか」のコーチでもあったロジャー・コーマン、そんな彼についての思いを語る人々はそのケチぶりを蔑み、つくる映画の内容をバカにするのだが皆一様に彼への愛と感謝を忘れていない。そう、何せ映画をつくらせてくれたのだから。
コーマンが「JAWS」や「スターウォーズ」をパクって安物ホラーやSFを量産したという世間の誤解を解いているのも興味深い。逆だったのだ。コーマンが営々とつくっていたそれら安物をビッグバジェットで大仕掛けにつくり直したのがルーカスでありスピルバーグだったのだ、と。
無名時代からのビジネスパートナーであり、数多くのコーマン作品に出演したジャック・ニコルソンの愛に溢れたインタビューは時に爆笑させられ、そして最後にはしんみりさせられる。それにしてもシルベスター・スタローンは何で出なかったんだろうこの映画に。消したい過去なのか。
とまれ、長らく映画を観て来た人間には楽しいプレゼントのような作品。

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