映画的日乗

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「ミッドナイト・イン・パリ」監督ウディ・アレン at シネリーブル神戸

 「人生万歳!」('10)以来の新作。
パリが舞台の本作だが、制作の国籍はアメリカとスペインの合作ということになっている。まだ読んでいる途中の「ウディ・アレンの映画術」(エリック・ラックス著)によると、近年のアレン作品は出資サイドの都合でロケ場所が決められることが多いようだ。という訳で本作も「パリありき」で企画されたと想像される。
 ギル・ベンダー(オーウェン・ウィルソン)なるハリウッドの脚本家が婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とその両親を伴ってパリに滞在。派手で明るいイネズに比べて理屈コキでイジケた感じのギルだが小説家への転向を狙っている。しかし書きかけの原稿は一向に進まない。そんな彼が酔ってパリの道に迷った夜、彼の前に一台のクラシックプジョーが止まった。誘われるがままにその車に乗ったギル。着いたところは1920年代のパーティ会場。そこには作家のフィッツジェラルド夫妻がいて、ヘミングウェイがギルの小説の草稿をガートルードに見てもらうよう手配する…というお話し。
 これを単純なタイムスリップものと捉えるのではなくギル氏のモラトリアム人生から来る妄想的心象風景ととるのが妥当だろう。「カイロの紫のバラ」('85)や「アリス」('90)のような、極端な孤独や心の渇きから妄想の世界へと入って行くアレン節のひとつのパターンである。付け加えると共和党右派を攻撃するギャグもいつも通り。案の定、自分のあるべき姿に気がついたギルはイネズと別れ、爽やかな表情でパリにとどまる。長らくアレン作品を見て来た者としては、このある種のアレン・パターンは快感でもある。
 1920年代の描写のディティールが正確且つ凝っていることはキネマ旬報6月上旬号での芝山幹郎氏の秀逸な論評が明かしており、一読の価値有り。ルイス・ブニュエルの「皆殺しの天使」('62)についてのやりとりは映画マニアならニヤリでしょう。
名手ダリウス・コンジの捉える明るいパリの外光と、時代ごとに変化するキャメラが素晴らしい。お勧め。


ウディ・アレンの映画術

ウディ・アレンの映画術

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