映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「女は二度生まれる」監督・川島雄三 at シネマヴェーラ渋谷

1961年大映作品。
川島雄三監督のクレジットにはわざわざ(東宝)と記されており、彼が大映に招かれ若尾文子を「女にする」と宣言したとかしないとかの意欲作。が、その言葉に偽りなし。滅法面白く、ベッドシーンがないのにエロティック。名前も知らぬ客、山村聰との床の中で靖国神社の太鼓の音を聞く芸者小えんこと若尾文子終戦記念日に記念撮影をする盲目の傷痍軍人達、そんな時代の芸者一代記。ポンポンポーンとテンポ良く歯切れよく、男前の学生(藤巻潤)にコナをかけ、お座敷の客の板前(フランキー堺)にチョイと惚れ、何屋か分らぬ金持ち(山茶花究)と遊び、結局山村聰の二号となる。渋谷宇田川町のアパートに囲われても17歳のチェリーボーイを弄び(今は亡き渋谷パンテオンのロケ!)、パパさんの手下に見つかって(この、アパートの向かいの工事の描写に唸る)ドスで脅され…しかし決してメゲない、陽気という訳でもないが思うがままの自由奔放、業の肯定のまま生きる。花街の空気感も含めて後年の森田芳光監督の作品群に通じるものあり。藤巻潤の仕打ちの残酷(歴然と示す身分違い)、ラストの無情、川島雄三恐るべし。こういう大人の映画が無くなった、文化が幼児退行しているこの国。傑作。


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