映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「カミハテ商店」監督・山本起也 at 第七藝術劇場

映画監督協会の忘年会で販売されていた前売り券で鑑賞。監督協会同人の山本監督はドキュメンタリー出身でこれが初の劇映画、プロデューサーに高橋伴明林海象の両ベテラン監督が就いてサポートしている。別の監督から聞いたその製作費は驚くべき低予算。プロデューサーもサポートと言うより切り詰めに苦心されたことであろう。俳優、スタッフの多くを京都造形芸術大学の学生が固めている。
日本海側のさる寂れた港町、上終と書いてカミハテと読むその土地は断崖絶壁があり、自殺の名所と化していた。かつて自身も父親を自殺で亡くした女(高橋惠子)が営む雑貨店。細長い素朴なコッペパンを焼いて売っている。それに自閉症の少年が運ぶ牛乳を付けて180円。自殺しようと訪れる人が最後の晩餐にそれを選ぶのが奇妙な習わしとなっている。一方、都会で働く、資金繰りに追われる零細会社の経営者である男(寺島進)。死にたいくらい寂寞とした日常だが、スナックで知り合った女と仲良くなる。しかしこの女、連れ子と貯金通帳を置いて蒸発する…というお話し。
この流れの中に様々な死にたい男女が絡む。そして高橋と寺島が意外な接点で結ばれて行くのだがそれは見てのお楽しみ。
ドキュメンタリー出身の山本監督、ゆっくりしたテンポでどう展開するのかドキドキさせるほど予定調和な伏線を張らない。常に鈍色の空、海、暗い雑貨店の中。全てがどんよりしているが、少しずつそれが変化して行く。決して晴れやかな希望に向かう訳ではないものの、高橋惠子の心の動きと呼応する繊細な演出。
自殺率の国際比較を見ると昨年度で日本は世界第八位。GNP規模からするとダントツの一位だ。
この生きにくさについて、何かを示唆してくれる映画ではないが、少なくとも登場する子供たちの未来に希望を託す意志は感じられた。


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