映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「クロユリ団地」監督・中田秀夫 at 新宿ピカデリー

オリジナル脚本(加藤淳也 三宅隆太)による中田秀夫監督のお家芸ホラー。
団地の、向かい合わせになっている二部屋の中でその出来事の殆どが展開する。撮影所に二部屋分のセットを組み、外景は調布の日活撮影所にほど近い団地でロケ。究極的に効率の良い撮影を狙ったのではと想像してしまった。そういえば中田監督の出世作「女優霊」('96)も日活撮影所から一歩も出ない映画だったな。
ベタなホラー描写が続くが底流に流れるのは「孤独の想念」。家族を失って自責にかられるヒロイン(前田敦子)の想念は家族との再会、恋人が事故で植物人間になってしまった男(成宮寛貴)の想念は彼女の復活である。もう一度会いたい、孤独から開放されたいというその一念が不可思議な幽霊的現象となって目の前に現れてしまうのである。なかなか哀しい物語なのだが、後半、霊媒師(手塚理美)によるお祓い儀式がカットバックで入るとどうもそういった情念が寸断されてしまう気がした。正直、エキセントリックな手塚理美が笑えるという程ではないにせよ、何とも違和感。
セットを広く見せる中田秀夫監督の空間演出は流石に秀逸、お代分は楽しめる。


にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村