映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「グランド・マスター」監督・王家衛 at TOHOシネマズ西宮OS

中国=フランス合作。中国本土の資本が大きく投入されることで実現したであろう大作。その分王家衛特有のエロティシズムは影を潜めたと見るのは穿ち過ぎか。が、ケレン味の雨あられハイスピード撮影で見せる水しぶきと風塵の中で繰り広げられるマーシャルアーツの流派を賭けた闘いの見事さには陶然となる。これは武侠の映像美がエクスタシーの域に達していると言っても過言ではない。
葉問(梁朝偉)と宮二(章子怡)の最初の対決はカンフーなのにラテンダンス、求愛の手合わせ。が、この叶わぬ恋から一転、章子怡は父である武術の師を弟子に殺されその復讐の為に後を追う。そして豪雪舞う駅舎で、復讐を果たさんべく渾身の力を込めて相手を倒す。このしびれるカッコよさ、緋牡丹博徒のお竜さんが脳裏をかすめたのは私だけか。
戦争の時代に翻弄され、決して激する事も諦める事もなく武術の道に生きた葉問の、香港での晩年の様子に「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」('84)のエンニオ・モリコーネ作曲のテーマ曲が重なる。ズルイ、やり過ぎ王さん、でもやりたかったんだろうなぁ。佳作、お勧め。



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