映画的日乗

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「ペコロスの母に会いに行く」監督・森崎東 at ユーロスペース

キネマ旬報」と「映画芸術」が年度ベストテンで同じ作品を1位に挙げるという前代未聞の衝撃。はて、認知症の母と介護する息子の話しでそんな…いや、不見識を恥じ入るしかない映画だった。
吉田喜重監督「人間の約束」('86)、あるいはリチャード・エアー監督「アイリス」('01)といった人間の尊厳ある老いと死を描いた作品から哀れみを描くだけの凡百の映画群までひとつのジャンルと言っても過言ではない認知症についての映画だが、監督森崎東(情報によると監督自身が認知症に罹っているとのこと)はこれまでの自身の作品と同じく、軽快で明るくパワフルにストーリーを紡いで行く。親子の子離れ、親離れ云々という言葉があるが、ここでは陽気でスケベな雄一(岩松了)と母ちゃん(赤木春恵)の間のがっちりとした親子愛が肯定として描かれる。そして無条件に祖母に優しい孫(大和田健介大和田伸也の息子、好演)の存在。しかし認知症の進行によって介護施設へ入所を余儀なくされた母の、忘れ得ない記憶を辿る描写に家族とは記憶によって繋がっていることを思い知らされる。母ちゃんの若き頃を演じる原田貴和子実妹原田知世の、子供の頃から幼なじみという設定で演じる再会の邂逅の瞬間は映画史に残る。原田貴和子のここへ来ての素晴らしい演技に女優って何なんだとさえ問いたくなる。
説明の為の回想を周到に避け、記憶への旅として描かれる人生から最早息子のことも忘れてしまった現在へと繋がり、そして見えて来る家族。ここで涙腺が決壊。傑作、必見。


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