映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「そこのみにて光輝く」監督・呉美保 at テアトル梅田

佐藤泰志の同名小説の映画化。原作は未読。
バジェットの極大・極小の分化がはっきりしてしまった今の日本映画界で、20年前なら成立しなかったような企画が極小のサイズで映画化可能となっている。
舞台は函館、森田芳光が描くようなヒンヤリとして清廉な風景はない。薄汚い荒野であり、終わってしまった地方都市である。そこで貧困と介護と絶望を一身に背負った女、千夏(池脇千鶴)とある不運によって自暴自棄となりぶらぶらと生きる男、達夫(綾野剛)が出会う。そして千夏の弟、拓児(菅田将暉)も仮釈放中、生き方が見つからない無軌道な日々の中、達夫と出会う。千夏は春をひさぎ、更に身勝手な妻子持ち(高橋和也)の愛人となり、その庇護で拓児は仕事をもらっている。更にイカの塩辛をつくる工場でも働いている。家では何もしない母親を食べさせ、寝たきりの父親の性欲処理もする。一瞬の安らぎもない彼女を抱きしめる達夫。抱きしめられたい人と抱きしめたい人の物語であり、拓児もまた終盤達夫に抱きしめられる。ぎこちない救世主とか弱き民が家族になることを目指す。
タイトル通り、ラストに差す朝日の光に微かな希望が感じられる瞬間は、恐らく絶対に逃すまいとその一瞬を狙い、撮ったのであろう。美しい。