西加奈子の同名小説の映画化。原作は未読。
兵庫県出身の芦田愛菜なくして成立しなかったであろう企画。夏休みの子供が主役、家族がテーマと、かつて相米慎二監督が関西を舞台に撮った「お引っ越し」('93)と「夏の庭」('94)の延長線上にある(電通とYTVが主宰している)ともいえる。相米チルドレン的な行定監督とくればなおさらだ。
物語の変化ではなく少女こっこ(芦田愛菜)の心の変化を追う演出で観念に陥らずむしろ素直に少女の心の模様に寄り添う。国境、人種、持つものと持たざるものといった観念の所業でしかない壁を、何も考えていないかのようにぶち破るこっこの純真は、観ている我々の心の曇りをあぶり出す。小学校時代は人生で一番素敵な時間だと思わせてくれる。
甲南女子大学メディア表現学科で講義。