映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ジャージーボーイズ」監督クリント・イーストウッド at 大阪ステーションシネマ

待望久しいクリント・イーストウッド監督最新作。前作「J・エドガー」('11)から3年空いてしまったのは別のミュージカル映画の企画が頓挫したからであると仄聞していたが、出来上がったのはやはり音楽映画だった。
これまでのカントリー「ブロンコ・ビリー」('80)ジャズ「バード」('88)とアメリカ音楽の原点的音楽を扱って来たイーストウッドが'50'sポップスを描く。結論的には本作が最も成功していると断言出来る。基がブロードウェイミュージカルで資料によると舞台版の脚本に近似しているらしい。
実在の音楽スターものの定番的な、貧困からの立身出世を夢見、ひょんなきっかけで成功、成金、そして転落、没落。そこからの逆転…といったこれまでも何度も語られて来た物語をメインボーカリストたるフランキー(ジョン・ロイド・ヤング)の人生を軸に流れるような軽やかさと茶目っ気で描くイーストウッド。音楽的知性と感覚が備わっていることの強み。
グラン・トリノ」('08)の荘厳な死から蘇って、力まず、振り返らず、老境の黄昏を微塵も感じさせない。この人が生きている限りアメリカ映画は死なない。
ラストのクリストファー・ウォーケンのステップで身も心も幸福感に浸って劇場を後に出来る。
傑作、必見。


にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村