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「6歳のボクが、大人になるまで」監督リチャード・リンクレイター at 大阪ステーションシネマ

過去と現在、ひとつのドラマの中で幾年月に渡る時間経過を描く時、我々はある「映画的」暗黙のルールに従い続けて来た。例えば「3年後」という字幕が出ればそれは撮影期間に関係なく(大抵の場合本当に3年経っていることはない)3年後としての映像である、と認識する。言い方を変えると、そうであることを許す。また、登場人物の幼年期やその反対の老年期を、明らかに別の俳優が演じていても、「そういうものだ」として許す。違和感を感じることを禁じるというか。で、リチャード・リンクレイターという人がこの禁じられた違和感の解消に敢然と挑んだのが本作である。
12年という時間をある家族がどう過ごしたか、を別の俳優に演じさせることなく6歳が18歳になるまでを見つめたのだ。前代未聞、空前絶後。そして脚本構成としての起承転結を取り入れず、続けようと思えばいくらでも続けられる時間の流れを紡ぐ。唯一、移民したばかりの配管工の「その後」が描かれる点が伏線的であり、映画的な感情の動揺を誘う。リンクレイター監督「サンセット/サンライズ」シリーズでもそうだが、何気ないどうでもいいような会話と、男女がなんということなく歩き続けたりするシーンの巧さはこの人ならでは。
イラク戦争マッキントッシュ製品で時代の流れを映し、アル中、ドラッグ、帰還兵、右派的なキリスト教、銃でアメリカという国を描く。佳作、お勧め。


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