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「ボーダーライン」監督ドゥニ・ヴィルニューヴ at 神戸国際松竹

アメリカとメキシコ国境の不法入国者と麻薬密売についての映画というのはいくつかあって、本作と似たタイトルの「ボーダー」('82)や「トラフィック」('00)が想起されるものの、本作はそれらを吹っ飛ばす非情な描写で綴る。冒頭の、武装警官が音もなく画面上手から入ってくるショットにこりゃただもんじゃない、と感じる。撮影監督は名匠ロジャー・ディーキンス。以後一切の予断が許されない展開、ヒロインエミリー・ブラントにも観客にも「作戦」の真意がわからないという構成、何より退役軍人とFBIとCIAの混成という精鋭の麻薬撲滅部隊の中で更に上を行く殺気を漲らせている(ように見える)ベニシオ・デル・トロが凄まじい。全身殺人凶器、容赦なし、妥協なし。バックボーンとしての復讐譚をきちんと背負っているリアリティ。全編のビジュアル設計も見事。傑作、必見。


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