映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「リンキング・ラブ」監督・金子修介 at 109シネマズHAT神戸

  ロマンポルノ出身の監督でコンスタントに毎年映画を撮っている監督というと金子修介監督だけではないか。今風、に寄ることなくむしろダサいくらいの「昔ながらの味」というか切れ味はなくとも変わらぬ老舗の味といったところか。自らが自作「就職戦線異常なし」('91)を解説、エンディングにまで拘りの「自筆」が登場、軽やかな遊び心で楽しい。

 その「就職戦線」の公開された時代、1991年が舞台。やはり今の人ってあの頃と顔が違う。単に幼いということだけではなく、ゴツさがない。バブル期は好景気であった反面、カテゴライズやヒエラルキーの確保を巡る争いの時代でもあったのかも知れない。あの頃のゴツさはその闘いの象徴で、今の子たちの確定されたカテゴライズとヒエラルキーの、そのくくりの中での「空気の読み合い」ではゴツさもギラツキも消えてしまうわけだ。そんな中樋井明日香という役者だけが最後まで「あの頃」感を湛えていた。

 タイムスリップの整合性などどうでもよく、'80s日活風老舗の味を楽しむ。「理論が古い」という台詞に笑う。