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「ハッピーエンド」監督ミヒャエル・ハネケ at シネリーブル神戸

HAPPY END || A Sony Pictures Classics Release

 予告編を観た時に即座に想起したのは日本のこの事件。案の定ハネケ監督はこの事件をヒントにして脚本を書いたことを認めている。なので、前作「愛、アムール」('13)を善なるハネケとしたら今作はワルい方のハネケだろうと想像していたら、観ているうちに「愛、アムール」の延長線上にあることが分かる。それは両作に登場するジャン=ルイ・トランティニャン演じる老人の行動だ。そしてこの底意地の悪いタイトルは決して内容と相反している訳ではなく、死を望むその老人の想念でもあるのだ。いやもう脱帽と言うしかないラストのパーティの顛末の意地の悪さ。登場人物全てに共通する「愛しているふり即ち自分勝手」。それは本質的な愛とは何かを描こうとした前作と深いところで繋がっている。

デジタル撮影に自覚的なルックはイーストウッドの近作と同じだ。老境の筈のハネケとイーストウッドが実は題材もつくり方も先鋭であることに刮目しなければならない。

傑作。お勧め。

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