1986年表現社=松竹作品。
プリント状態は良くない。宮川一夫撮影の完全形は想像で補うしかない。
18世紀時は元禄、剣術よりも茶道が尊ばれる時代、篠田演出は当時の遊びや風俗、祭りを微に入り細に入り見せる。脚本は面白く、笹野権三(郷ひろみ)はさしずめ近松版ドンファン。あっちゃこっちゃ女に手を付けるが一切責任を取らない。そんな彼にキリキリと嫉妬する川側(火野正平)が騒動の種を撒き散らし、権三は窮地に追い込まれる。
不貞の逃避行は溝口健二「近松物語」('54)と同じ。女(岩下志麻)が先に胎をくくって開き直るのは近松ものの常道。なるほど参勤交代の副産物は不倫だったのか。着物が分厚いほど、帯が長いほど情欲は深い。