映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「1987、ある闘いの真実」監督チョン・ジュナン at シネマート心斎橋

1987arutatakai-movie.com

 全斗煥軍事政権下で起きた、ソウル大学生拷問致死事件の映画化。「タクシー運転手」で描かれた光州事件は知識として知っていたが、その7年後にこのような重大な人権弾圧事件を知らなかった不見識を恥じる。

 対北朝鮮のスパイ摘発を目的とした組織「南営洞」がその事件の主犯なのだが、全斗煥大統領直轄の組織故やりたい放題。検察、警察、刑務所に圧力をかけ事件の形骸化を計る。圧力というよりはヤクザ顔負けの暴力である。必死に抵抗するのは検察の中の一人の男、マスコミ、そして反政府市民組織。1987年のソウルを再現するセットデザインは細部まで凝っていてリアルさを失わない。何より役者の素晴らしさには溜め息が出る思いだ。「犯罪都市」でええ味出してたヤクザがここでは暴力公安の一員で暴れまくっており、韓国映画でしばしば描かれる性根の腐りきった悪党造形の徹底ぶりがここでも遺憾無く発揮されている。が、彼らもトカゲの尻尾であり、尻尾を切る側がさらに上から切られる終盤は'70年代東映ヤクザ映画さながら、どこの社会も同じという無情。

 ただ追われる反政府市民組織が金日成政権から資金を得ている、という「南営洞」の見立てが筋違いなのか、捏造なのか、はたまた真実なのがが曖昧。

 とまれ、役者のクオリティ、凝った脚本、美術デザイン、ちゃんとお金かけてちゃんと撮っている撮影、照明全て天晴れ。やっぱりちゃんとつくってるよ韓国映画は。日本映画、貧し過ぎるよ。

 佳作、お勧め。