映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「家族を想うとき」監督ケン・ローチ at 新宿武蔵野館

www.sorrywemissedyou.co.uk  エンドロールのThanksの欄に、正確な英語の文言は失念したが「取材した運転手達。ただし名前は明かせない」とあった。綿密に取材されたと思しき英国の宅配便の運送業者の実態を描く。それは個人事業者とは名ばかりで本質はGPSを付けられた家畜のようなものである。

 事業に失敗し、この仕事に就いた男リッキー(クリス・ヒッチェン)は、介護ヘルパー業の妻アビー(デビー・ハニーウッド)、不登校の長男、聡明な長女と暮らす。アビーの仕事道具でもある車をいやいや売らせて買った宅配業用のバンで出勤。過酷な長時間労働を強いられる夫婦。働けど働けど我が暮らし楽にならざる、の日々が淡々と綴られる。英国らしいのは彼らは一様に家族と一緒に過ごす時間を大切にしたいと願う事。これがままならない。そして長男の反抗、父との対立。ネタバレになるので正確な描写を書くのは避けるが、「家族で過ごす時間」が無くなる事を避けたい一心の長女の取った行動に思わず落涙。ケン・ローチは前作「私は、ダニエル・ブレイク」('16)に引き続き社会システムに対する激しい怒りをぶつける。ここに描かれている弱者に対する不寛容、融通の無さは翻って我が国にも充分当て嵌まる。いやそっくりと言えよう。日本の宅配ドライバーのシステムはどうなのかは知らないが、長距離トラックや長距離バスの過重労働とそれ故の事故はしばしば報道でも目にする。効率主義に押しつぶされる人間性

 映画はラストに向かって悲惨さを加速させて行く。予定調和な家族の団円を避けた厳しさに、本気のボディブローをくらった気分だ。佳作、お勧め。