映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

「宇宙でいちばんあかるい屋根」監督・藤井直人 at OSシネマズ神戸ハーバーランド

uchu-ichi.jp 原作があるそうだが、映画として特に珍しい話しではないと思う。桃井かおりが出て来たあたりで「アルゼンチンババア」('07)や「東京上空いらっしゃいませ」('90)などをすぐに想起した。

 エンドロールで千葉県茂原市山形県鶴岡市でロケーションされたことが分かるが、広大な住宅街の俯瞰から、一人の少女つばめ(清原果耶)が隣家のポストに手紙を入れる滑り出しから物語に引き込む力を感じさせる。

   つばめから何かを問われても嬉しいのか悲しいのか分からない複雑な表情をする父(吉岡秀隆)、妊娠中の母(坂井真紀、好演)。父の複雑な表情の訳は中盤に明かされるが、訳ありな家庭であることはつばめの行動から読めて来る。元カレはやんちゃそうだが子供っぽいツッパリ、一方手紙を送った相手、隣家の青年亨くん(伊藤健太郎)はとことん爽やか。手紙を送った事を後悔しているつばめの前に現れたのが星ばあ(桃井かおり)。星ばあは如何なる魔法を持っているのか手紙を取り返して来る。報酬はコンビニ弁当。

 このつばめが星ばあに出会う場所が書道教室の入ったビルの屋上。今どきの邦画では珍しいきちんと作られたセット(美術・部谷京子)。日常の空気を払拭した濃密だが洒落のきいた異空間の造形が素晴らしい。百戦錬磨、手練手管の桃井かおりの芝居が見事なのは勿論、堂々与した清原も才気が漲る。

 誰かを愛していることがその相手に伝わり、それを掛け値なしに受け止められるということは至難であることは自明だ。つばめの亨君への思い、両親のつばめへの思い、星ばあの孫への思い。受け止める側はどうにもぶっきらぼうだったりするが、微かに伝わっている事を役者の表情で語らせていて秀逸。それぞれの優しさ溢れる愛を衒いなく描く藤井監督のセンスは近年の邦画では群を抜いている。

 気になった事を一点だけ。病院の屋上の植え込みが汚い。

 佳作、お勧め。